【日数は?繰り越しできる?】地方公務員の有給休暇事情【職歴13年・元公務員が年休について詳しく解説します】

有休の日数は? 余ったら繰り越せる? 民間と比べてどう? 地方公務員の有給休暇事情 有休の取得状況について、国家公務員・民間と比較! 【職歴13年】 元公務員が公務員の年休について詳しく解説します!

こんにちは、てつです。

私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。

このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。

今回の記事のテーマは、「地方公務員の有給休暇」

民間と比べると待遇面で恵まれていると言われる公務員。

なんとなく休みやすそうなイメージはありますが、実際にはどうなのか…

気になる方も多いのではないでしょうか?

公務員は年間どのくらい有給休暇が取れる?

有給休暇は時間単位でも取れる?

残った有給休暇は来年に繰り越せる?

役所は有給休暇が取りやすい雰囲気なの?

この記事では、地方公務員として13年間勤務し、多くの部署を渡り歩いてきた元公務員の私が、地方公務員の有給休暇とその実態について、詳しく解説します。

ぜひ最後までお読みください。

目次

年次有給休暇とは?|地方公務員に関する法律の規定は?

年次有給休暇とは、労働者が仕事を休んでも、通常の賃金が支払われる休暇のことです。

一般的には、「有給休暇」「有休」「有給」「年休」とも呼ばれています。

公務員の世界では「年次休暇」と言う場合もあります。

有休は、民間でも公務員でも自由な意思で取得でき、労働基準法で定められた労働者の権利です。

有休を取得して、日々の仕事の疲れを取り、気分をリフレッシュすることで、意欲的に仕事に取り組むことができます。

地方公務員の年次有給休暇については、それぞれの自治体の条例・規則で定められています。

ただし、自治体間の不均衡をなくすため、ほとんどの自治体の条例・規則が同じように規定されています。

よって、自治体による大きな違いはありません。

まずは1番気になる、地方公務員が取得できる有休の日数について、解説していきます。

地方公務員の年次休暇(有給休暇)の日数

地方公務員が付与される年間の有給休暇の日数は20日間です。

地方公務員の待遇面については、各自治体の条例で定めることとされており、国家公務員や他自治体と大きな違いが生まれないよう規定されています。

(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)

第二十四条
(1~3省略)

4 職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。

5 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

地方公務員法

このように、地方公務員法では職員の有給休暇日数を具体的に規定しているわけではありませんが、各自治体が足並みをそろえるような形で、地方公務員の年間の有休は20日となっています。

ただし、新規採用職員や年度途中に採用された職員に関しては、別途、条例・規則で定められているうえ、付与日数は算定の基準日によって異なります。

地方公務員の有給休暇の基準日について、次に解説します。

新卒職員は何日?リセットはいつ?|地方公務員の年次休暇(有給休暇)の基準日

地方公務員の有休を算定する際の基準日は、以下の2パターンがあります。

  • 1月1日(暦年単位で算定する場合)
  • 4月1日(会計年度単位で算定する場合)

どちらなのかは各自治体の条例・規則で定められており、基準日を境に有休がリセットされて、新たに20日付与されます。

なお、以前は暦年基準が主流でしたが、近年は会計年度単位で算定する自治体が増加しているようです。

気になる新卒職員の入庁時の有給休暇日数も、基準日によって異なります。

新規採用職員の入庁時有給休暇日数
  • 暦年算定(1月1日基準)の場合➡15日
  • 会計年度算定(4月1日基準)の場合➡20日

暦年の場合、新規採用職員は1月から3月までは所属していないことになるので、その分付与日数が減るわけですね。

私も入庁時は暦年だったため15日でしたが、その後会計年度基準に条例改正されたため、現在入庁する新規採用職員の方は20日間の有休がもらえています。

ちなみに、条例では以下のように規定されているので、気になる自治体の条例・規則も確認してみるとよいでしょう。

暦年基準の場合

(年次有給休暇)

第13条 年次有給休暇は、一の年ごとの休暇とし、その日数は、一の年において、20日(育児短時間勤務職員等及び定年前再任用短時間勤務職員にあっては、その者の勤務時間等を考慮し20日を超えない範囲内で区規則で定める日数)とする。

新宿区職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例

会計年度基準の場合

(年次有給休暇)

第13条 年次有給休暇は、一会計年度ごとの休暇とし、その日数は、一会計年度において、二十日(育児短時間勤務職員等及び定年前再任用短時間勤務職員にあっては、その者の勤務時間等を考慮し二十日を超えない範囲内で規則で定める日数)とする

東京都江戸川区 職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例

地方公務員は有休取りやすい?|国家公務員・民間と比較してみた

有休は付与されていても実際に使えないと意味がありませんよね。

そこで、地方公務員と国家公務員、民間の有休付与日数と取得状況を比較してみましょう。

地方公務員・国家公務員・民間の有休取得状況

区分年間付与日数平均取得日数取得率
地方公務員20日12.6日63.0%
国家公務員20日15.5日77.5%
民間企業17.6日10.9日62.1%
出典
地方公務員:総務省「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果
国家公務員:人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査結果
民間企業:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査

データを比較してみると、地方公務員は民間企業より有休の取得率が高く、有休が取りやすいと言えます。

一般的に激務のイメージもある国家公務員の取得率が高いのが特徴的ですが、地方公務員は自治体によってかなりバラつきがあるようです。

もう少し詳しく見ていきましょう。

自治体規模別|年次有給休暇の取得状況(令和4年1月~12月)

区分平均取得日数
都道府県12.8日
指定都市14.9日
市区町村301名以上
(536団体)
12.5日
101名以上300名以下
(689団体)
10.8日
100名以下
(496団体)
10.6日
全体12.6日
出典:総務省「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果

地方公務員の有休取得の実態を自治体の規模別に見てみると、明らかな違いが出てきますね。

まず、最も有休が取得できているのは政令指定都市の市役所です。

興味深いのは、自治体の規模が小さくなればなるほど、取得日数が少なくなっている点です。

政令指定都市と100名以下の小規模自治体を比較すると、年間5日以上の差があります。

ただ、有休の取りやすさは部署によっても異なります。

例えば、窓口業務中心の部署は、職員みんなが自由に有休を取ってしまえば、窓口業務に支障をきたします。

結果として、住民サービスに影響が出てしまうため、他職員との調整が必要です。

とはいえ、一般的には「職員数が多い組織の方が有休が比較的取りやすい」ということは言えるでしょう。

時間休も可能?|地方公務員の有休取得単位

地方公務員の有給休暇については、1日または半日単位で取得するのが原則ですが、時間単位の取得も認められています。

また、労働基準法では時間単位の有休取得は5日以内と規定されています(労働基準法第39条第4項)が、地方公務員は「特に必要と認められる場合」は日数の上限は適用されません(地方公務員法第58条第4項)。

多くの自治体の条例・規則では、時間単位の有休取得について規定しており、有休の範囲内で時間休を取得することができます。

例えば、札幌市では以下のように条例・規則で規程しています。

第7条

5 年次休暇は、1日又は半日(第7項に定めるところにより所定の勤務時間を任命権者が定める時刻により区分した勤務時間及び同項本文に規定する範囲内の勤務時間のみが割り振られている日の勤務時間をいう。次条第1項及び第2項並びに別表3備考2において同じ。)を単位として与える。ただし、任命権者が必要があると認める場合には、1時間(1時間未満の時間を単位とする年次休暇を与えることについて任命権者が特別の事情があると認めるときにあっては、1時間未満の時間。第8項において同じ。)を単位として与えることができる。

札幌市職員の勤務条件に関する条例施行規則

他の自治体の条例・規則でも同様の文言で定められています。

これだけを読むと、時間休の取得はハードルが高そうに見えますが、実態としては「特別の事情」を意識している職員は少ないです。

時間休を取得するケース自体が「遅刻」や「体調不良」が主な原因で、年間にそう多くはないですし、管理職が必要と認めれば取れるため、あまり強く意識する必要はないでしょう。

地方公務員の有休の申請方法

多くの自治体がシステム入力による申請です。

職員による申請後、管理職がシステム上で承認すれば、正式に有休が取得できます。

有休の申請は事前申請が原則です。

有休を取る予定がある場合は、前日までに必ず申請しましょう。

あわせて、申請する前には、自分が有休をすることによる職場への影響も確認してください。

有休の取得は労働者に認められている権利であり、原則、理由なく自由に請求できますが、職場への配慮は社会人としての最低限のマナーです。

自分が逆の立場になったことも考えて、有休は計画的に消化していきましょう。

また、急な体調不などで、当日になって有休を取得せざるを得ない場合もあります。

この場合は、事後の申請も認められています。

余ったら…|地方公務員の年次休暇(有給休暇)の繰り越し

地方公務員の有給休暇は、次の基準日までに使い切れなかった場合、基準日以降の1年に繰り越すことができます。

ただし、繰り越せる日数には上限があり、20日を限度とすることが多いです。

このため、最大40日間の有休が保有できます。

逆に、次の基準日までに残りの有休を20日以内にしないと、「超過分の有休を捨てる」形になってしまいます。

有休は計画的に消化していきましょう。

QA|地方公務員の有給休暇に関する疑問

上司に有休の理由を説明する必要はある?

ありません。
有休は理由なく取得することができます。
コミュニケーションのなかで聞かれることもありますが、言いたくなければ、うまくはぐらかしましょう。

上司に有給休暇の取得を拒否されることはある?

めったにありませんが、ケースによってはあります。
承認権者には、条例・規則で時季変更権の行使が認められており、公務の正常な運営を妨げる場合は、有休の申請を拒否することが可能です。
実際に拒否されるケースはほとんどありませんが、上司から他の職員との調整を依頼されることは珍しくありません。

地方公務員にも労働基準法上の「年次有給休暇の義務化(5日)」が適用される?

労働基準法第39条第7項における年5日の有休取得義務に関する規定は、地方公務員には適用されません。(地方公務員法第58条第3項)
ただし、労働基準法の趣旨を踏まえ、自治体にも職員の有休取得促進に積極的に取り組むことが求められています。
多くの自治体で職員の働き方改革に関する計画が作成されており、国をあげて職員の有休取得を推奨しています。

遅刻した場合は有休が減る?

自己都合の遅刻の場合は、通常有休を消化することになります。
電車遅延などやむを得ない事情がある場合は、特別休暇扱いになります。

有休は連続で取得してもいい?

かまいません。
繁忙期と閑散期がはっきりしている職場では、閑散期にまとめて連続で取る職員もいます。
なかには、有休を連続で取得して海外旅行に行く職員もいます。
ただし、職場への配慮は必要です。

まとめ

以上、地方公務員の有給休暇事情について解説してきました。

最後にポイントを再度まとめます。

  • 地方公務員の年間有給休暇日数は20日で、民間企業よりも多い
  • 有給休暇は1月1日または4月1日を基準日としてリセットされる
  • 有給休暇は原則として1日または半日単位で取得するが、時間単位の取得も可能
  • 取得しなかった有給休暇は、20日を上限として翌年に繰り越すことができる
  • 地方公務員の有給休暇の取得率は民間企業よりも高いが、自治体によって差がある

有給休暇は労働者に与えられた大切な権利であり、心身のリフレッシュや私生活の充実のために活用すべきものです。

しかし、業務への影響を考慮せずに有休を取得することは、職場の理解を得られないこともあります。

また、自治体や職場の状況によって、有休の取得しやすさにも差があります。

上司や同僚とコミュニケーションを取りながら計画的に有休を取得し、働きやすい職場環境を作っていくことが大切です。

有給休暇を上手に活用して、仕事とプライベートの両立を図り、健康的で充実した公務員生活を送りましょう。

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