こんにちは、てつです。
私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。
このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。
今回の記事のテーマは「新卒で公務員になるのはもったいないのか?」
別にそんなことはありません。
私は13年間公務員として働き、多くの新卒職員を見てきましたが、彼らを見て「もったいない」と思ったことはありません。
逆に、「うらやましい」と思うこともありました。
この記事では、なぜ「新卒で公務員になるのはもったいない」と言われるのかを分析したうえで、新卒で公務員になるメリット・デメリットを解説します。
新卒のみなさんには「もったいない」なんて思わずに、ぜひ果敢に公務員試験にチャレンジしていただきたいと思います。
理由を分析|新卒で公務員になることの何が「もったいない」と言われるのか?
新卒カードがなくなってしまう!?
民間企業の多くは新卒者を対象とした採用枠を設けており、いわゆる「新卒カード」を持つ応募者を優遇する傾向があります。
一方、公務員試験の受験資格は比較的広く、既卒者でも受験できます。
このため、新卒で公務員になると民間企業への就職機会を逃してしまうため、「人生に1回しかない新卒カードを公務員試験に使ってしまうのは、もったいないのではないか」という意見です。
一理ありますが、この思考は「就職=お金を得るための手段」としか考えていないからでしょう。
そうであれば、確かにもったいないかもしれませんね。
でも、新卒者の方には、単に生活費を稼ぐ手段としてではなく、
就職は自己実現を図るための手段
と捉えていただきたいです。
そう捉えれば、自然と「新卒で公務員になるのはもったいない」という思考はなくなるでしょう。
転職が難しくなる!?
公務員は民間企業での経験者と比べて、民間企業への転職が難しいと言われています。
公務員の業務は利益を追求しないため、培ったスキルが民間企業で評価されにくいということのようです。
また、公務員は安定志向が強く、仕事に消極的だと見られがちだという意見もあります。
確かに、そのように思われてしまっては転職は難しいかもしれません。
ただ、就職活動の段階で転職の可能性を考えて就職先を選ぶのは、公務員であれ民間であれ、長続きしない選択だと言えます。
もちろん、転職は自分のキャリアを見直し、新たな挑戦を求める際の選択肢の1つではあります。
しかし、自己実現は転職だけが唯一の方法ではありません。
公務員の業務は多岐に渡るため、人事異動によって業務内容がガラッと変わります。
公務員になると、まるで「人事異動=転職」といった感覚を味わうことになるでしょう。
公務員として働き続けながらも自己実現を図る方法はいくらでもあると考えれば、「もったいない」とまでは思えなくなるのではないでしょうか。
スキルが活かせない!?
公務員の仕事は、「誰でもできる簡単な仕事」というイメージを持たれがちで、「自分のスキルが活かせない」「新たなスキルが身につかない」と思われています。
法律や規則に基づいて業務を遂行するため、個人の裁量が限られており、新しいアイデアや創意工夫が活かしにくいと考える人もいるでしょう。
ただ、これは誤解ですね。
公務員の業務は本当に多岐に渡り、様々な分野で高度な専門性が求められています。
法律や規則を正確に理解して適切に運用するためには、高いレベルのスキルと知識が必要不可欠で、特に配属1年目は勉強の毎日です。
また、近年は、コスト意識が高まってきているため、職員には業務を効率化するための新たなアイデアも求められています。
さらに、公務員は住民との対話、他部署との連携など、高いコミュニケーション能力が求められる場面もあります。
このように、公務員の仕事は「誰でもできる」ものではなく、高度なスキルと専門性が求められるため、決して「スキルを活かせない」というわけではありません。
公務員に限らず民間企業であっても、与えられた環境でスキルを活かせるかどうかはあなた次第です。
ちなみに、「公務員の仕事はつまらない」というイメージもあるようです。
これも、個人の主観であり、気持ちの持っていき方次第で変わってきます。
関連記事「公務員の仕事は退屈でつまらないって本当?」で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
新卒で公務員になることのデメリット
ここまで読んでくると、自分自身の思考を変えれば、新卒で公務員になることのデメリットはなさそうに思えてしまいます。
ただ、このように言うと弊害があるかもしれませんが、
ちゃんとデメリットはあります・・・
特に新卒の方にとってデメリットを感じそうなことを3つ解説していきたいと思います。
年功序列が基本
公務員の世界では、良くも悪くも年功序列が基本です。
このため、
20代で管理職に!
というのは、民間企業ではありえても、公務員では絶対にありえません。
昇進・昇給のスピードはある程度決まっており、一定の年数を経ないと出世できないのが公務員です。
ただ、裏を返せば、過度な競争にさらされずにじっくりと経験を積めるということでもあります。
年功序列のなかで、着実にステップアップしていくことが求められる職業だと言えるでしょう。
成果が給与に反映されにくい
年功序列に関連しますが、仕事の成果が給与に反映されにくいのも公務員のデメリットと言えます。
このため、
20代で年収1000万円!
というのは、民間企業ではありえても、公務員では絶対にありえません。
公務員の給与は各自治体の条例で定める給料表に基づいて支給される(参照:地方公務員法第25条)ため、大きな成果をあげたからといって急激に給料が上がることはありません。
そうすると「公務員は努力しても無駄」という考えになってしまいますが、公務員にも人事評価システムはあります。
地方公務員法第23条では人事評価について規定されており、給与等もこの評価を参考にすることとされています。
(人事評価の根本基準)
地方公務員法
第二十三条 職員の人事評価は、公正に行われなければならない。
2 任命権者は、人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用するものとする。
ただ、公務員の人事評価システムは参考程度にしかなっていないというのが現状です。
というのも、公務員の仕事は民間企業のようにはっきりとした数字で成果を表すことができないためです。
公務員の仕事でも、目に見える成果はありますが、事業規模が大きいと結果が出るまでに数十年かかるプロジェクトもあり、やはり評価はなかなか難しいのです。
このように、公務員の仕事は、実績や成果がすぐに給与に反映されにくいため、モチベーションが上がらないと感じる人もいるかもしれません。
バッシングの対象になりやすい
公務員は、国民の税金で運営されている組織で働く以上、国民の厳しい目にさらされています。
窓口対応をしていると、住民から厳しい叱責を受けることも時にはあります。
特に新卒職員の方は年齢が若いため、バッシングしやすいのか、窓口で高圧的な態度をとってくる住民もいなくはないです。
最近では、窓口での住民対応の1つ間違えてしまうと、すぐにSNSで拡散され、大きなニュースになってしまうことも…
しっかりと仕事をしていれば、バッシングを受ける機会は意外とありませんが、それでも理不尽に罵声を浴びることもあるのは事実です。
もうこれは公務員の宿命と考えるしかないですね。
だからこそ、
「公務員には高い倫理観と強い責任感が求められる」
と、私は公務員であることに誇りを持つようにしてきました。
公務員は国民の信頼に応えられるよう、日々の業務に真摯に取り組むことが何より大切だと言えます。
新卒公務員は若いうちにライフプランが立てやすい!|多くの新卒職員を見てきた元公務員が思ったこと
ここまでは新卒で公務員になることのデメリットや持つべき思考を書いてきましたが、ここでは、私が13年間某区役所で多くの新卒職員を見てきて思ったことを書きたいと思います。
私は年齢制限ギリギリの27歳で入庁しましたが、これまで新卒職員を見てきて思ったこと。
それは、
新卒職員は若いうちにライフプランが立てやすい
ということです。
もちろん、新卒職員の全員がそうではありませんでしたが、傾向として私が感じたことです。
3つご紹介します。
公務員は結婚が早い
晩婚化が少子化に拍車をかけていると言われていますが、
公務員は結婚するのが早い
と今でも感じています。
「新卒で入庁して3~4年後に結婚」というのも珍しくありませんし、むしろ普通です。
理由は言うまでもなく、「収入が安定しているから」ですね。
若いうちに子どもが産める
「子どもを産むのは若いうちがいい」というとハラスメント発言になってしまう昨今ですが、体力的なことや高齢出産のリスクを考えるとできるだけ若いうちに子どもを産みたいという女性も多いでしょう。
私の感覚としては、
公務員は若いうちに子どもを産む人が多い
と思います。
収入面で安定しているということと、休暇制度が整っていることが大きいですね。
私がいた職場でも20代で出産するのは珍しくありませんでしたし、子どもが3人以上いる方も普通にいましたね。
若くしてマイホームが持てる
今でこそマイホームはそれほど日本人の夢ではなくなりましたが、やはりしっかりとした生活の本拠を構えるというのは重要なこと。
特に若くして結婚した公務員の方は、若いうちに35年ローンを組んでマイホームを購入する方も結構いました。
若いうちにマイホームが購入できるのは、安定した収入とローンが組める社会的信用がある公務員ならでは。
例えば、30歳で35年ローンを組んだ場合、定年までにローンを払い終えることができますよね。
このように、新卒で公務員になった場合、若いうちに将来に向けた人生設計がしやすいというのが、私の実感です。
次に、もう少し客観的に、新卒公務員のメリットをご説明したいと思います。
新卒で公務員になることのメリット
公務員になることで得られるメリットのなかで、特に「新卒で公務員になる」ことに焦点をあてて、メリットを解説していきたいと思います。
収入が安定する
公務員の収入の安定性は、何よりも大きなメリットですね。
高収入は見込めないものの、景気の変動に左右されにくく、定期的な昇給もあります。
また、長期的に安定した収入が見込めるのも大きいです。
新卒で入庁すれば若いうちに「安定した収入」が手に入ります。
これは、ライフプランを立てる上で非常に重要な要素ですね。
日常生活が充実する
一般的に、民間と比べて、公務員は残業が少なく、休暇も取得しやすいです。
また、各種手当や割引制度など、福利厚生も充実しています。
仕事だけでなくプライベートの時間も大切にしたい人にうれしいですね。
若いうちにしかできないこともあるので、ワークライフバランスを重視する方にとって、公務員はとても魅力的な職業です。
若くして昇進できる
公務員は年功序列的な側面もありますが、その分、若くして昇進できるチャンスもあります。
能力次第では、20代後半~30代前半で係長になることも可能です。
私の場合は、27歳で入庁し、32歳で主任昇任、37歳で係長級昇任、38歳で管理職試験合格までストレートで昇任しました。
とすると、私がもし新卒で入庁していたら、もっと早く昇任できるということですよね。
段階的にキャリアアップできるというのは、仕事のモチベーションを高める上で重要な要素になります。
新卒で公務員になるのはもったいなくない!
この記事では、新卒で公務員になることの「もったいない」と思われる点(デメリット)と、実際のメリットについて詳しく見てきました。
確かに、年功序列やスキルの活かしにくさ、世間の厳しい目など、新卒で公務員になることに不安がある方もいるでしょう。
一方で、収入の安定性、充実した日常生活、若くしてのキャリアアップの可能性など、大きなメリットがあることも事実です。
特に、私自身の経験から言えば、新卒で公務員になることで、早い段階からライフプランを立てやすいというのは、非常に大きな魅力だと感じています。
もちろん、公務員という道を選ぶかどうかは、それぞれの価値観や目標によって異なります。
しかし、「新卒で公務員になるのはもったいない」というイメージに縛られず、その可能性を真剣に考えてみる価値は十分にあるでしょう。
新卒で公務員を目指す皆さんには、自分の適性と公務員の仕事の意義をしっかりと見極めた上で、自信を持ってその道に進んでいってほしいと思います。
そして、公務員としてのキャリアを通じて、自己実現と社会貢献を同時に達成していってほしいと願っています。