【やりたくない…拒否できる?手当は?】公務員の選挙事務の実情とは?【従事経験のある元公務員が経験談も語ります】

やりたくない…拒否できる?手当は? 公務員の選挙事務の実情 元公務員の経験談も掲載! 【職歴13年・選挙事務経験者】 元公務員が公務員の選挙事務のホントを語ります!

こんにちは、てつです。

私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。

このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。

今回の記事のテーマは、「公務員の選挙事務の実情とやりたくない公務員へのメッセージ」

選挙は民主主義の根幹を支える大切な行事ですが、その裏で働く公務員の本音は複雑…

「やりたくない」という思いがある公務員の方も多いのではないでしょうか?。

その気持ちも分かります。

公務員として13年間区役所に勤務した私も実は「選挙事務はやりたくない」職員でしたから…

従事経験は1回しかありません。

でも、私は選挙事務をやってこなかったことを後悔しています。

この記事では、私自身の経験談も交えながら、元公務員の私が、公務員の選挙事務の実情を語ります。

この記事を読んで、少しでも公務員の方が前向きに選挙事務に取り組まれることを願っています。

目次

やりたくない…|公務員の選挙事務は拒否できる?

東京都知事選挙 期日前投票所

結論から言うと、選挙事務の従事依頼に対して、やむを得ない理由がない限り、完全に拒否することは難しいです。

通常は事前に希望調査があるため、調査に対して「希望しない」を選択することは問題ありません。

ただし、希望者が少なく、部署ごとの割り当て人数を満たすために、上司から依頼された場合、やらざるを得ないというのが現実です。

公務員は公共の利益のために従事する義務がある旨が地方公務員法に規定されています。

(服務の根本基準)

第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

地方公務員法

民主主義の根幹であり、国民の権利である選挙は「公共の利益の対象となる最たるもの」です。

選挙事務は公務員の重要な職務の1つとされており、正当な理由なく拒否することは、この規定に反する可能性があります。

公務員は「全体の奉仕者」たる立場として、選挙事務に従事すべきだということですね。

公務員が選挙事務を拒否したらどうなる?

選挙事務を拒否したとしても、実際には目に見えて不利益な影響は感じません。

ただ、全く影響がないとは言い切れないと思います。

考えられる影響について、ご説明します。

職場内であまりよく思われない

選挙事務従事には必ず部署ごとの割り当てがあります。

あなたが毎回選挙事務を拒否した場合、必ず他の誰かが事務従事をしています。

多くの職員は「できればやりたくない」という気持ちなので、あなたが「いつも選挙事務を拒否する人」と周囲に見られてしまいます。

そこからさらに、「面倒な仕事を避けて、他人に押し付ける人」と思われてしまう可能性もあります。

そうなってしまうと、通常業務でコミュニケーションがうまく取れなかったり、最悪の場合協力してもらえないことも予想されます。

人事評価に影響する

選挙事務を拒否することだけで人事評価に大きく影響することはありませんが、多少の影響は考えられます。

「やりたくないこと」はやらないで、「やりたいことだけやる」人は明らかに課長の心象はよくないですよね。

評価をする課長だって人間です。

どんな仕事でも前向きに積極的に取り組む人の方が評価はいいに決まっています。

また、選挙事務に従事するということは、組織に貢献すること。

組織貢献度の面から言えば、選挙事務への従事は確実に貢献していると言えるため、人事評価への好影響はあるでしょう。

懲戒処分の対象になりうる

かなりレアケースですが、上司の指示に従わない場合、最悪のケースとして、懲戒処分の対象になる可能性はあります。

事前の希望調査であれば「希望しない」を選択しても、特に問題はありません。

しかし、上司から直接、選挙への事務従事の指示があった場合には、従わなければなりません。

地方公務員法では…

(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)

第32条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

地方公務員法

と規定しており、上司の指示があった場合は、指示に従う義務があります。

ただ、事前調査の延長線上として上司から声をかけられるケースもあるので、これを「指示」ととるのかはかなり微妙です。

また、上司の立場に立ってみると、無理な指示は「パワハラ」ととられかねないので、あまり強く言えないというのもあります。

上司と良好な関係を保つためにも、事情を正直に話したうえで、妥協点を見出していくのが現実的ですね。

公務員が選挙事務をやりたくない理由とは?

多くの公務員が選挙事務に対して消極的な姿勢を示す背景には、さまざまな理由があります。

ここでは、主な3つの理由について詳しく見ていきましょう。

体力的な負担が大きい

投票所には多くの住民が選挙のために一気に押し寄せるため、円滑に選挙が行えるように仕事をする必要があります。

多くの公務員は通常デスクワークですが、選挙事務の日だけはとにかく動き回ります。

人が多く、騒がしい空間の中で、1日中動き回ると、相当体力を消耗します。

従事する時間も、投票開始前から投票終了まで12時間以上…

休憩時間があるとはいえ、結構ハードです。

選挙事務に従事すると、相当疲れてしまい、場合によっては次の日の仕事に影響してしまうため、「やりたくない」という人が多いですね。

精神的な負担も大きい

選挙事務は体力面だけでなく精神面でも負担が大きいです。

投票事務は基本は流れ作業で、投票に来た住民をスムーズに案内するのが主な仕事ですが、ミスが許されないのです。

選挙権は国民1人ひとりに与えられた非常に重い権利。

ミスがあった場合、その権利を失わせてしまう恐れがあります。

しかも、取り返せないミスもありうるのが選挙事務です。

近年は、1つのミスでも全国ニュースになってしまいます。

選挙事務を引き受けたからには緊張感をもって従事する必要があるため、あまりやりたくないと思う職員もかなりいるのが事実です。

プライベートの時間がなくなる

選挙事務は当日事務の場合、日曜日に従事することになります。

また、期日前投票事務でも、土日の従事や時間外の事務があります。

自治体によっても異なりますが、多くの場合、選挙事務の従事者には代休ではなく手当が与えられるのが通常です。

お金がもらえるとはいえ、プライベートの時間が無くなってしまうのは事実…

プライベートを充実させたい人にとっては、選挙事務はできればやりたくないというのが本音でしょう。

業務負担のわりに手当(報酬)が少ない

選挙事務に1日従事すると、3~5万円前後の特別手当(金額は自治体によって異なります)が支給されますが、これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれです。

私が入庁した頃は、「いいお小遣いになる」と言って従事する若手職員も多かったですが、近年はコスパ・タイパ重視の傾向もあり、以前ほど特別手当に魅力を感じなくなってきている職員も多いようです。

業務負担のわりに手当が少ないと感じてしまうと、やりたくないと思うのも仕方ないのかもしれませんね。

以上のように、「選挙事務をやりたくない」と思う公務員が多いというのもうなづけます。

ただ、区役所に13年間勤務した私としては、選挙事務はやったほうがいいと思いますし、若いうちにやっておいたほうがいいと思っています。

次に、私の経験談も交えながら、選挙事務に従事すべき理由を語りたいと思います。

「選挙事務は若いうちに…」は本当?

選挙の時期になると、ベテラン職員が若手職員に「選挙は若いうちにやっておいたほうがいいよ」と言っているのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

これは、選挙事務をやりたくないベテラン職員が若手職員にやらせたいときに使われる、いわば決まり文句のようなものとしてとらえられていますよね。

でも、「選挙事務は若いうちにやっておいたほうがいい」というのは、あながち間違っていないと思います。

このあとは、私の経験談を交えて、その理由を説明したいと思います。

【経験談】職歴13年・元公務員が選挙事務で後悔したこと

私は13年間区役所に勤務しましたが、選挙事務に従事したのはたった1回でした。

でも、今思えば、「若いことに何度かやっておけばよかったな」と思います。

若手の頃は選挙事務を断っていた

私が勤務した13年の間に選挙は何度もあったのですが、そのたびに断っていました。

自宅が遠いというのもありますが、正直「やりたくない」というのが大きいです。

なので、公務員のみなさんが「やりたくない」と思う気持ちも分かります。

若手の頃は選挙のたびに事前調査で断り、なんとか乗り切っていましたが、10年目にとある理由でやらざるを得ない状況になってしまいました。

10年目で選挙事務を初体験

選挙事務には投票所の現場責任者のような役割もあり、この役割は係長級以上というケースが多いです。

何かあったときに責任が取れる職層ということですね。

当然、その役割を担える係長級の職員は一般職員より圧倒的に少ないわけで、自分に回ってくる可能性も高く…

また、係長級になると通常業務で係をまたぐ折衝もあるわけで、あまり「貸し」を作りすぎると、仕事がやりにくくなってしまうというのもあります。

それで、仕方なく選挙事務を引き受けたのが10年目でした。

初めての選挙事務はいきなり責任者

これがかなり大変でしたね…

係長級ということで、選挙事務の経験もないのに、いきなり期日前投票所の責任者の立場になりました。

選挙事務というと、流れ作業のイメージがありますが、かなりイレギュラーなケースも多く、責任者が対応しなければいけないことが結構あり、頭が大混乱…

1人の住民の1票は大事な権利…間違えたらおおごとです。

事前に対応マニュアルは配布されていたものの、経験がないためイメージがあまりわかないまま従事当日を迎えてしまったのです。

イレギュラーケースに対応中も投票者の波は続き、そちらにも気を配らなければならず、相当苦労しましたね。

最終的には、その日投票に来た人は2000人以上…

現場には選管OBの職員もいてくださったため、なんとか乗り切ることができましたが、1日がとても長く感じたのを覚えています。

選挙事務を経験して後悔したこと

なんとか選挙事務を終えて、思ったことは…

若い頃にやっておけばよかった…

若い頃ただ「やりたくない」という理由で、選挙事務に従事してこなかったことを後悔しました。

年齢を重ねて職層が上がっていくと、いくらやりたくなくても、選挙事務に従事しなければならない状況に直面することが必ずあります。

管理職になると、選挙事務従事は必須業務です。

選挙事務は確かに大変で、精神的にも負担がある事務ですが、責任が浅い若い頃に経験しておくことをおすすめします。

公務員の選挙事務の種類は?

公務員の選挙事務の種類は大きく分けて3つあります。

  • 当日投票事務
  • 当日開票事務
  • 期日前投票事務

それぞれの事務の特徴とメリット・デメリットを解説していきます。

当日投票事務

当日投票事務は選挙当日の投票時間帯に従事する事務です。

主な業務は以下のとおりです。

  • 会場内外の案内・誘導
  • 選挙権の確認
  • 投票用紙の交付
  • 投票箱の監視
  • 要介助者の介助

各職員が分担して行います。

当日投票事務は、選挙事務のいわば本丸ですが、職員にとってメリット・デメリットがあります。

メリット
デメリット
  • 手当の金額が最も高い
  • 終了時間が決まっている
  • 従事職員が多い
  • 朝が早い
  • 拘束時間が長い
  • 会場へのアクセスが悪い場合がある

当日投票のメリットしては、日曜日で従事時間が長いため特別手当が高く、投票終了時間が午後8時と決まっているため、終わりが見えていることです。

また、期日前投票と比べると従事職員が多いため、何かあっても協力し合えるというのもメリットです。

一方、デメリットとしては、まず朝が早いのがありますね。

投票前の準備作業で、職員によっては朝6時に会場集合も珍しくありません。

また、拘束時間は準備・片づけ含めて12時間以上になります。

当日は多くの会場が設置されるため、必ずしもアクセスのいい駅近とは限らないのもデメリットと言えます。

当日開票事務

当日開票事務は、投票箱の投票用紙を集計する作業がメインです。

メリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット
デメリット
  • 精神的負担が少ない
  • 拘束時間が短い
  • 手当が少ない
  • 夜が遅い
  • 運が悪いと終わりが見えない

当日開票事務の最大のメリットは精神的負担が少ないこと。

もちろん1票の重みはあるため緊張感のある作業ですが、ある程度マイペースで作業ができるため、投票事務と比べると精神的な負担は圧倒的に少ないです。

開票事務は早ければ、3時間程度で終了するため、拘束時間が短いのもメリットです。

一方で、拘束時間が短い分、手当の金額が少ないのがデメリットです。

また、終了が深夜になることが多いです。

次の日は月曜日で出勤のため、睡眠時間が短くなりつらいかもしれません。

そして、「集計結果が合わない」などの問題が起こると、再集計のケースもあり、数が合うまで作業は続きます。

最悪の場合、終了が未明になることもあります。

期日前投票事務

選挙の告示から投票日の前日までの期間に、期日前投票の事務に従事します。

従事内容は当日投票とほぼ同じです。

期日前投票のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット
デメリット
  • 平日にも従事できる
  • 投票者が少ない
  • 平日だと時間外手当しか出ない
  • 通常業務ができない

期日前投票のメリットは、平日にも従事できること。

平日に従事できれば、貴重な土日は削られなくて済みますね。

また、期日前投票は当日投票と比べて投票者が少ない傾向があり、事務負担はそれほど大きくない場合が多いです。

ただし、これは会場によっても違いますし、近年は期日前投票の割合も増加しているため、一概には言えません。

明らかなデメリットとしては、平日だと手当が少ないことです。

通常の勤務時間帯は選挙事務に従事したとしても、出張扱いのようになるケースが多く、特に特別手当は出ません。

手当が出るのは、通常の勤務時間以外の分だけなので、選挙事務の労力に比べてもらえる手当がかなり少なく感じてしまうかもしれません。

また、平日従事の場合、当然ですが、自分の担当業務はできません。

スケジュールに余裕があればいいのですが、選挙事務で丸1日通常業務ができないとなると、通常業務を圧迫することになりかねません。

選挙事務の従事が決まったら、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。

やりたくないけど少しでも前向きに…|公務員の選挙事務のメリット

やりたくないけど選挙事務に従事することになったら、少しでも前向きにとらえて選挙事務に臨みましょう。

イヤイヤやっても何の経験にもなりませんし、ミスを誘発しかねないからです。

私は自身があまり従事してこなかった後悔があるため、現役公務員の方には少しでも積極性を持って従事してもらいたいと思います。

そこで、少しでも前向きに選挙事務に当たるため、選挙事務のメリットをご紹介します。

公務員が選挙事務に従事すると特別に手当(報酬)がもらえる

選挙事務の場合、土日や時間外に従事すると、特別に手当が支給されます。

1日の選挙事務で最も多くもらえるのが、休日の投票事務。

3~5万円前後はもらえるはずです。

開票事務でも数万円はもらえるので、ちょっとしたご褒美になりますね。

通常業務では得られない経験ができる

選挙事務は数年に1回しかできない、特別な経験ができる貴重な機会です。

従事してみると分かりますが、予想以上に1票の重みを知ることになります。

これは従事した人にしか分からないことです。

選挙はまさに民主主義の根幹。

公務員たるものこの経験は何ものにも代えがたいですよ。

人脈形成ができる

選挙事務では普段関わることのない職員と交流できる機会でもあります。

職種が違う職員と知り合うチャンスでもあります。

公務員はさまざまな部署を渡り歩くので、いつどこで一緒に仕事をすることになるか分かりません。

もしかしたら、将来自分の上司になる人もいるかも…

意識せず自然と人脈を広げることができるのも選挙事務のメリットです。

QA|公務員の選挙事務に関する疑問

選挙事務を断ると人事評価や出世に影響する?

直接的な影響はありません。

ただし、頑なに従事しない姿勢だと、「組織貢献意欲が低い」「仕事に消極的」とみなされてしまう可能性はあります。

選挙事務に従事する際の服装は?

基本的は通常業務と同じです。

ただし、できるだけ動きやすい服装で臨みましょう。

男性はスーツが基本ですが、ジャケットは脱いでもよいでしょう。
また、女性はハイヒールは避けたほうがよいです。

選挙事務をやりたくない職員はどれくらいいる?

統計データがないため何とも言えませんが、かなりいます。

あくまで私の印象ですが、少なくとも半数以上の職員は「できればやりたくない」と思っています。

みんな「やりたくない」のは一緒です。

毎回やれとは言いませんが、お互いさまの精神で、数回に1度は引き受けましょう。

選挙事務をやりたくない公務員の方へのメッセージ

以上、ここまで公務員の選挙事務の実情を書いてきました。

私もやってこなかった立場なので偉そうなことは言えませんが、今思えば、

もっとやっておけばよかった

と思っています。

選挙事務は確かに「業務負担のわりに見返りが少ない」というのも分かります。

コスパ・タイパの観点で言うとそうなのですが、それ以上に経験・スキル面で得られるものが大きいです。

また、私自身の経験を振り返って、「選挙事務をやらないことによって失っているものもある」こともあると思います。

選挙事務は公務員にしかできない貴重な経験ができる仕事です。

選挙事務を好きになることはないかもしれませんが、ぜひ前向きに取り組んで、充実した公務員生活につなげていただきたいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次