「地方公務員(市役所職員)はブラックでやばい」は本当?【職歴13年の元公務員が考察・解説します】

5つのブラック要素について元公務員が分析・考察 地方公務員(市役所職員)はブラックでやばい!? 【都内某区役所で13年】さまざまな部署を見てきた元公務員が解説します!

こんにちは、てつです。

私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。

このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。

今回の記事のテーマは「地方公務員(市役所職員)の職場はブラックなのか?」

・市役所内でパワハラ行為があり、職員が処分を受けた
・マイナンバー対応で市役所職員が休日返上で作業している

最近はこんなニュースを時々耳にしますよね。

ネット上でも、地方公務員の職場環境の厳しさを指摘する声が見られます。

そんな情報に触れると、地方公務員を目指している方は、

「市役所職員はブラック職場なの?」「地方公務員はブラックでやばそう…」

と不安に思われるでしょう。

果たして実態はどうなのでしょうか。

この記事では、都内区役所職員として13年間勤務した元公務員の私が、ブラック職場の特徴を1つ1つ検証し、 地方公務員(市役所職員)の職場が「本当にブラックなのか」を考察・解説します。

また、実際に私が区役所職員時代に味わった「ブラックな経験」と私が考える「市役所内のブラック部署」もご紹介したいと思います。

あわせて、地方公務員の職場環境の改善に向けた取組についても、解説していきます。

この記事を通して、地方公務員(市役所職員)の職場環境の実態を知っていただければと思います。

目次

【結論】地方公務員(市役所職員)の職場は一部ブラックです!でも、やばいわけではありません!

結論から言えば、

地方公務員(市役所職員)の職場環境は、大部分はブラックとは言えないものの、一部ブラックな面があります

近年、多くの自治体がこの問題に危機感を抱き、職員の働き方改革に向けた取組を積極的に行っています。

こうした取組をしなければならないこと自体、「地方公務員の職場にはブラックな面が存在する」ということの裏返しでしょう。

ただ、民間企業にも勤めた経験がある私からすれば、

「日本にブラックな面が全くない職場があるのか?」

と思いますが…

一般的に「ブラック」な職場とは以下のいずれかの点にあてはまるケースだと考えられています。

  1. 長時間の残業が多い
  2. 有給休暇が取りずらい
  3. 賃金不払い
  4. ハラスメントがある
  5. 離職率が高い

誰もこんな職場では働きたくないですよね。

だからこそ、各自治体は優秀な人材を確保するために、働き方改革の取組を加速させています。

では、地方公務員の職場の実態はどうなのでしょうか?

このあと考察していきます。

5つのブラック要素を検証・考察|地方公務員(市役所職員)の何がやばいのか?

都内区役所に13年間勤め、さまざまな部署を見てきた元公務員の私が、ブラック職場に見られる5つの要素について、地方公務員の職場実態を考察していきたいと思います。

1 長時間の残業は多い?

どのくらい残業があるかは働くうえで最も気になる点でしょう

地方公務員と民間企業の残業時間を国の調査結果から比較してみましょう。

2023年度における地方公務員の月平均残業時間は、政令指定都市で13時間、市区町村で11.4時間でした。

一方、民間企業の月平均残業時間は13.9時間。

地方公務員の方が、月平均の残業時間が短いことがわかりました。

ただ、地方公務員に関する調査では、月45時間を超える職員の割合が、政令指定都市では5.9%、市区町村では4.9%との数字もあります。

やはり、一部の部署では長時間の残業が発生しているようです。

私が経験したなかでは、マイナンバー制度が施行された時期は、マイナンバーカードの申請が殺到して私も含め多くの職員が残業しながら必死に事務処理をしていましたね。

その後、全庁的な応援態勢となって他部署の職員による助けもあり、なんとか乗り越えることができました。

役所では、一時的に人出不足に陥るような事務に関しては、緊急対応できる場合もあれば、人員を確保できず今いる職員で残業して凌がなければならない場合もあるため、これは覚悟しなければなりません。

【出典】
地方公務員に関する調査:総務省『地方公務員における働き方改革に係る状況
民間企業に関する調査:厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和4年度分結果確報

2 有給休暇は取りづらい?

職場環境を判断するうえで有給休暇が取りやすい環境かどうかも重要な指標です。

2023年の年次有給休暇の平均取得日数は、政令指定都市で14.9日、市区町村で12日

一方、民間企業の場合は10.9日。(出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」)

地方公務員の方が有給を多く取れていることがわかります。

取得手続きもシステム入力のみというところが多いでしょう。

いちいち取得前に上司に直接言わなければならないようなところは今どき少ない気がします。

職員の休暇取得手続きがシステム化しているのは、有給を取得しやすい環境づくりの一環でもあるのです。

ただ、部署や時期によっては、有給が取りづらい状況はあります。

窓口業務では極端に窓口要員が少なくなることを避けるために職員間で配慮する必要がありますし、年度末などの繁忙期は取得すら難しいこともあります。

地方公務員は有給が取りやすいのは確かですが、休むと穴をあけてしまうのは事実です。

「自分が休ませてもらった分、同僚が休む日は自分が穴埋めをする!」という意識を持てれば、さらに有給が取得しやすい環境が作れるでしょう。

公務員の有給休暇ついては、関連記事「公務員の有給休暇事情」で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

3 賃金不払いはある?

自治体が賃金不払いをやってしまったら大問題になってしまうのでありえませんね。

もう少ししっかり説明すると、地方公務員の給与については地方公務員法で各自治体の条例で定めるよう規定されています。

さらに、以下のとおり、条例以外では支給してはいけないとまで規定しています。

第二十四条
5 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

第二十五条 職員の給与は、前条第五項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず、また、これに基づかずには、いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。

地方公務員法

もし万が一不払いが生じたら、「条例違反」になってしまうのです。

このため、地方公務員の給与の不払いはありません

ただ、私の場合、繁忙で残業代を申請するのを忘れてしまい、一部残業代が出なかったことがあります。

このケースは単なる申請漏れで不払いではないのですが、残業代は申請しないと支給されないので、忘れずに申請しましょう。

また、残業したのに「残業になったのは自分の仕事が不効率だから」と言って残業代を申請しない人もいましたが、それはダメです。

よほど効率が悪ければ上司から指導が入るかもしれませんが、そうでないかぎりは「残業している」のですから、しっかりと申請するようにしましょう。

4 ハラスメントはある?

「地方公務員に関してはハラスメントはない」と言いたいところですが、残念ながらゼロではありません

ハラスメントは、被害者の心身の健康を害するとても深刻な問題です。

最悪の場合、被害者が休職や退職に追い込まれ、社会復帰が難しくなるほど大きなダメージを負ってしまうケースもあります。

ただ、ハラスメントは組織の体質でありながら、個々の職員の意識の問題でもあるため、ゼロにするのは非常に難しいです。

実際に私も別の部署の係長から大声で恫喝されたことがありました。

あとで謝られましたが、やはり少し距離を置くようになってしまいました。

ハラスメントに関しては、国も深刻に受け止めており、毎年各自治体に調査行い、その結果を公表しています。

調査によると、ハラスメントの相談窓口を設置している自治体の割合はほぼ100%になっており、ハラスメント防止に向けた国と各自治体の取組は着実に成果を上げています。(出典:総務省「地方公共団体における各種ハラスメント対策の取組状況調査結果」)

5 離職率は高い?

地方公務員の離職率がそれほど高くはないのは多くの方がお分かりではないでしょうか?

ブラックな面もありそうですが、それでも地方公務員は安定しているので離職率は低いです。

2021年(令和3年)について、事務職の地方公務員における、在職者数と普通退職者数から離職率を割り出してみたところ、下表の結果になりました。

項 目政令指定都市市区町村
在職者数104,217人481,937人586,154人
退職者数960人6,344人7,304人
離職率0.92%1.32%1.25%
出典:総務省「令和4年地方公務員給与の実態」より抜粋
※「退職者数」は普通退職者の数
※離職率は「退職者数÷在職者数×100」で計算(小数点第3位以下四捨五入)

なんと離職率は、1%台と相当低いですね。

対して、民間企業の離職率は11.1%。(出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概要」)

地方公務員(市役所職員)の離職率は、民間と比較すると、はるかに低いですね。

ただ、公務員の場合、「離職率が低い=ブラックではない」とは言い切れません。

なぜなら、公務員は収入面で安定していて、福利厚生も充実しているため、多少ブラックでも離職しない(できない)職員が多いと考えられるためです。

それでも、地方公務員には「ブラックな面はあったとしても離職に至るほどではない」と言えます。

地方公務員(市役所職員)のブラックな面は今後どうなる?

多くの地方公務員が職場でブラックな一面を感じつつも、公務員としてのメリットの方が大きいと感じ、離職にまでは至っていないようです。

それでも、ブラックな部分があるのは事実。

このブラックな面が今後改善されていくのか、それともさらにブラックになるのか…

気になりますよね。

実際のところはそのときになってみないとわかりませんが、近年は、国主導で各自治体が職場環境の改善に向けた計画・取組がはじまっています。

2019年4月1日には、働き方改革関連法により、地方公務員にも時間外勤務の上限規制(原則月45時間)が導入されました。

これをきっかけとして、国は地方公務員の時間外勤務上限規制を実効性のあるものにすること、職員の健康管理を行うことなどを各自治体に通達

この通達に基づいて、多くの自治体で職員の働き方改革に向けた計画が作成され、公式サイトなどで公表されています。

あなたが興味・関心を持つ自治体やお住まいの自治体の公式サイトをぜひ確認してみてください。

また、「公務員の仕事が退屈でつまらない」というイメージも「公務員はブラック」というイメージにつながっている面もあります。

公務員の仕事が本当に退屈でつまらないのかについては、関連記事「公務員の仕事は退屈でつまらないって本当?」で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

地方公務員のブラック環境を変えるには職員自身の意識が重要

ここまで、「地方公務員(市役所職員)の職場はブラックなのか?」について、ブラック要素を一つひとつ検証・考察してきました。

地方公務員の職場環境は決してブラックとは言えず、民間企業と比べると、かなり恵まれていると言えます。

ただし、部署や時期などによっては、ブラックな面があるのも事実です。

たとえ職場環境の一部分でしかないとしても、ブラックな面があるのであれば変えていかなければなりません。

働き方改革は労務管理部署のみの取組だけでは絶対に実現しません。

個々の職員の変える意識が必要です。

この記事を読んだあなたが、晴れて地方公務員になったら、一職員としてぜひ働き方改革に貢献してほしいと思います。

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