こんにちは、てつです。
私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。
このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。
今回の記事のテーマは、「公務員の主任職とは?」
私は、26歳で入庁し、5年目にさしかかるころ、主任昇任試験の勉強をはじめました。
試験勉強に苦しむ一方、こんな疑問も抱えていました。
- 公務員の主任ってどんな仕事をするの?
- 主任に昇任するための方法は?
- 主任の給料はどのくらい?
- 主任になるには何歳くらいなの?
今思えば、主任の役割や仕事内容もよく分かっていないのに、昇任を目指すのは本末転倒としか言えませんね⋯
でも、
よく分からないけど、とりあえず主任を目指している⋯
という方もいるのではないでしょうか?
それはそれでアリだとは思いますが、主任昇任後のことをイメージすることで、目標が明確になり、具体的な行動に結びつきやすくなります。
この記事では、都内区役所で公務員として13年間勤務し、最速ストレートで管理職選考まで合格した私の経験をもとに、地方公務員の主任職について詳しく解説します。
地方公務員の主任職とは?|位置付けと求められる役割
入庁してすぐの職員の方は、先輩の主任職員にいろいろと教わっていることでしょう。
また、すでに主任になることを目標として、日々の仕事を頑張っている方もいるかもしれませんね。
公務員にとって主任職は、出世(昇任)でいえば最初のステップ。
どの職員にとっても特別で印象深い役職と言ってもいいでしょう。
地方公務員における主任職の位置付けは、全体のルートのなかでは以下の位置です。
昇任ルートにおける主任の位置付け
主任職は、役職としては下から2番目。
役所の役職は、階級とそれほど意味の違いはありません。
ただ、階級は給与査定の基準になるのに対し、役職は、
業務で求められる役割・責任の違い
を表しています。
主任職は、下から2番目の役職とはいえ、実務面で重要な役割を担うポスト。
また、係長級以上へと昇任する前の準備段階とも言うことができ、主任職としての働きぶりが、その後の出世に大きく関わる側面もあります。
地方公務員における主任職の役割と責任
主任職の役割は、一見すると分かりづらく、主事とそれほど変わらないように見えます。
主任にも担当業務が割り振られているうえ、係長のようなリーダー的な明確な立場がないからです。
1つの係のなかに、主任職が何人もいるということも珍しくありませんね。
しかし、当然ながら、主任職にも役割が存在します。
自治体によって役割の位置付けは異なりますが、主な役割としては以下のとおりです。
- 係長業務のサポート
- コミュニケーションの橋渡し
- 後輩職員の指導
先述したように、主任は自分の担当業務を持っているので、役割をしっかりと自覚しないと、ただ自分の業務をこなすだけ⋯
主事と同じことになってしまいます。
実はこの役割をあまり認識していない職員が意外に多いんですよね。
これでは、主任である意味が全くありません。
主任には、主任としての役割をしっかりと意識することが重要なんです。
では、その役割をそれぞれ解説します。
主任の役割① 係長業務のサポート
主任は、自分の担当業務に加えて、係長業務のサポートをする重要な役割があります。
例えば、
- 会議のための資料作成
- 資料作成のためのデータ収集・分析・とりまとめ作業
といったような、係長が仕事をするうえで必要な補助的な作業を行います。
係長業務の補助というと、主査との役割と混同してしまいそうですが、主任はあくまで実務面での細かな補助。
主任は、主査とは違って係長級としての権限は持たないため、係長業務の代理・兼務はできません。
主任による係長のサポートは、多くは係長からの指示を受けて行いますが、ときには主任自ら申し出るケースもあります。
日頃から係長の様子をよく観察し、必要に応じて自然とサポートできるのが主任としての理想の姿ですね。
主任の役割② コミュニケーションの橋渡し
係内のコミュニケーションを円滑化するのも主任の重要な役割です。
公務員の仕事は基本的にチームで行います。
係員全員がチームとして仕事をするために、主任は、係長の方針や指示の意図を正確に理解し、分かりやすい形で係員に伝えなければなりません。
また、言葉で伝えるだけでなく、実際に行動で示すことも大切です。
部署によっては、1つの係の係員が20名以上という大規模な係もあるでしょう。
係員全員が同じ認識で同じ方向を向くことは、とても難しいこと。
もしできなければ、住民に対して、公正公平で質の高い公共サービスが提供できなくなる恐れがあります。
だからこそ、主任が係長と係員の間に立ち、率先してコミュニケーションをとらなければなりません。
主任は、常に係長の行動を観察する必要があります。
「係長級昇任の前段階」としても重要なことですね。
主任の役割③ 後輩職員の指導
主任には、後輩職員に対して指導・アドバイスを行い、育成する役割もあります。
業務そのものに関する知識はもちろん、一般的な社会人としてのマナーから役所内のルールまで、職員として知っておくことをOJT形式で教えます。
また、公務員は業務上、法令等に沿って様々な判断を求められます。
例えば、以下のような事務です。
- 住民税・保険料・年金額等の算定
- 各種許認可申請の審査
- 個人情報を含む証明書類等の交付審査
これらは、ほとんどが基本的なパターンが多いのですが、例外的なケースも意外と多く、判断に迷う場合があります。
こうした判断はベテランでも難しいケースがあり、単に知識量で対処できません。
判断を間違えると、トラブルに発展する恐れも⋯
特例が絡むとさらに判断は難しいですね。
金額や個人情報に関する場合、ミスをするとかなり大変なことになるので、すごく緊張します。
あらゆる場面で職員としての正当な判断ができるよう、経験豊富な主任職が現場で若手職員を育成する必要があります。
また、マニュアルにはない様々な暗黙のルールを教えるのも後輩指導に欠かせません。
複数部署にまたがる事務の場合、決裁をとる前に話を通しておく順番のルールもあったりしますね。
「A係の前に、B係に話を通しておけ」というやつです。
これを間違えると、あとで部署間のトラブルになったりするので、ばかにならないんですよね。
正直「そんなの知らんがな!」っていう感じですけどね⋯(笑)
役所の不文律を破ると結構面倒なことになったりもします。
地方公務員が主任になるには?|年齢と昇任方法
地方公務員が主任に昇任すると、より自分の実力を発揮できるようになり、組織内での存在感も増します。
これと同時に給料もやりがいも増すということもあり、多くの職員が主任職への昇任を目指します。
では、どうすれば主任職に昇任できるのでしょうか?
その方法とタイミングを解説します。
昇任方法は「昇任試験合格」か「選考」のどちらか
地方公務員が主任に昇任するには、以下のいずれかの方法があります。
- 昇任試験で合格する
- 昇任選考で選抜される
昇任試験とは、競争試験とも呼ばれ、筆記試験・論文・口頭試問(面接)等の試験が実施されます。
昇任試験では通常、試験結果と人事評価(勤務評定)を加味して総合的に合格者が決定。
昇任試験の受験には、一定の年齢・経験年数などの要件が必要です。
なお、現在、主任昇任試験を実施している自治体は東京都、特別区、一部の県庁、政令指定都市などで、全国レベルでは少数派になっています。
一方、選考による方式は、希望者について人事評価(勤務評定)のみで昇任者を選抜する方法で、一定の要件があります。
また、一定の年齢または経験年数に達すると、ほぼ自動的に昇任できる制度がある自治体もあります。
公務員何年目(何歳)で主任になれる?
大卒程度の公務員試験で入庁した場合、通常、5年以上の経験が要件で、高卒の場合、8年程度の経験が必要です。
このため、23歳で入庁した場合、最速で6年目(28歳)には主任に昇任できる可能性があります。
ただし、ストレートで昇任できる職員はごく一部。
多くは、30歳前後で昇任しています。
3回目・4回目の昇任試験でやっと合格できたというケースも珍しくありません。
ちなみに、私は、26歳で入庁し、昇任試験に一発合格。31歳で主任に昇任しました。
同期職員で一発合格できたのは、約10%程度でした。
公務員の主任試験とは?|受験資格と試験内容
主任昇任試験は、実施団体数としては少数派ですが、大規模な自治体では多くの職員を対象に行われています。
試験の種類としては、
- 筆記試験(択一式・記述式)
- 論文試験
- 口頭試問(面接試験)
- 集団討論
などで、自治体によって方式は異なります。
筆記試験の科目としては、一般教養のほか地方公務員に関する法令知識、時事問題、当該自治体の政策を問う問題などが出題。
公務員として働きながら試験勉強をしなければならず、受験生にとっては大きなハードルです。
筆記試験で問われる法令知識としては、地方自治法、地方公務員法を中心とした問題構成が多い傾向にあります。
論文試験は、主任としての心構えを問われる設問のほか、政策課題に関する設問が出題される自治体もあります。
主任昇任試験は、多くの職員が受験する試験のため、合格率はそれほど高くなく、しっかりとした対策が必要です。
地方公務員が主任になることのメリット
主任を目指す方で昇給を目的としている方は多いと思いますが、主任にはそれ以外のメリットもあります。
メリットを認識すると、試験勉強のモチベーションが維持できます。
主任昇任後も仕事のやりがいを感じられるでしょう。
では、私自身の経験から、主任のメリットをご紹介します。
給料が増える
主任に昇任すると、確実に給料が増えます。
もちろん、入庁時の給料表の号級やそれまでの人事評価によって多少の違いはあります。
それでも、昇給を目に見えて実感できるのは、主任昇任時であることは間違いありません。
早めに昇任すれば、年齢的に給与総額も高額ではないため、引かれる税金の影響も少ないです。
このため、仕事へのモチベーションも格段に上がります。
具体的な金額は後述します。
仕事の幅が広がる
主任になると、徐々にできる仕事の幅が広がります。
上司から任される仕事内容や求められる精度が高度になります。
部署や職種ごとに異なりますが、私が経験した具体例で言うと、
- 委託事業者との交渉役を任された
- マイナンバー制度導入に伴うシステム構築担当になった
- 新たな業務マニュアルの作成を手がけた
私が配属されていた部署が窓口業務中心だったため、主事の頃はひたすら窓口に出て住民対応をする毎日でした。
ただ、主任に昇任してからは、ある程度の責任を伴う対外交渉に関わる業務を任されました。
対外交渉は部署内の会議と異なり、自治体としての姿勢や考え方を業者に伝える使命があります。
それだけに、下手な説明はできないので、事前によく勉強して打ち合わせに臨みましたし、その場のやりとりも臨機応変さが求められるので、とてもよい経験になりましたね。
任される仕事は緊張感がありますが、逆に仕事のモチベーションにつながりましたね。
いくら仕事でも毎日同じような仕事ばかりでは、生きている実感がなくなってしまいます。
仕事の幅が広がることは、生き生きとやりがいを持って日々過ごせるようになることだと気づきましたね。
こうしたことが自信につながり、業務マニュアルの作成を係長に申し出たところ、快諾をいただき、その成果物は課長にも評価してもらいました。
業務スキルが向上する
主任になると、業務スキルが格段に向上します。
業務自体の難易度が高くなることはもちろん、出席する会議や打ち合わせが増えていくでしょう。
また、スキルとは少し違うかもしれませんが、役所内の暗黙のルールも知る機会が増えます。
暗黙のルールといっても、パンドラの箱のようなものではなく、自治体の予算・条例の成立過程や議会対応などです。
役所には、昔から引き継がれている慣習によって行わる事務がいまだに多く存在します。
こういった事務は本当にどのマニュアルにも載っていないんです。
役所独特のルールを知るようになると、変な意味で「公務員」であることを実感します。ただ、このルールを知っているからといって、知らない職員に対してマウントを取るのは恥ずかしいですよ。
地方公務員が主任に昇任した際に注意すべきこと
主任に昇任するということは、仕事の質も責任も1段階上がること。
社会人としては成長への第1歩です。
一方で、注意すべき点もあります。
注意点をしっかりと意識して、できる対策をとり、有意義な公務員ライフを過ごしましょう。
ワークライフバランスが崩れる可能性がある
主任になると、仕事量も難易度もあがります。
やりがいがあるので、スキルアップにつながりますが、より効率性が求められます。
不効率なやり方だと、仕事が溜まってしまい、残業が増えることも⋯
残業や仕事のストレスが蓄積すると、体調を崩す恐れもあります。
ワークライフバランスをより強く意識して、毎日定時で退庁することを心がけましょう。
私が失敗したのがこれです。マイナンバー制度の導入と時期が重なってしまったのもあります。窓口業務終了後に、新制度対応の事務をしていたので、残業が重なってかなりきつかったです。
適度な人間関係を心がける
主任になると、庁内の会議や対外交渉に参加する機会が増えます。
特定の人に深く取り入ったり、逆に距離を取ったりするような、極端な人間関係の持ち方は避けることをおすすめします。
公務員の世界は広いようでかなり狭いです。
いつどこでまた仕事を共にするかわかりません。
仕事の人間関係だと割り切って、適度な距離を保って、多くの関係者と良好な関係を築き、いざというとき協力し合えるようにしておきましょう。
あいさつの機会も増えるので、この機会に自分の名刺を作るのもよいでしょう。
会議や打合せでは発言する
出席する会議の機会も増えますが、会議中は常に頭を働かせ、1度は発言するようにしましょう。
出席した会議で何も発言しないのはNGです。
出席する意味がありませんし、時間の無駄です。
会議や打ち合わせには常に自分の考えを持って参加すると、存在意義が微妙な会議でも、少しは自分のためになります。
困るのは原稿を読み上げるだけの形骸化した会議ですね。これは仕方がないので、そういうものだと思ってください。
地方公務員・主任職の給料(年収)|どのくらい昇給する?
主任に昇任すると、基本給が3〜5万円程度増えます。
昇任すると、まず給料表における役職別の号級が1段階上がります。
そのうえで、勤務成績等で決定する役職内の細かな号級段階のどこに位置するかで給料が決定します。
基本的には、昇任前の号級をもとにして、昇任後の号級が細かく定められているので、個々で確認してみてください。
3〜5万円ぐらいしか上がらないのか⋯
と思う方もいるかもしれませんが、基本給が上がると、基本給をベースとして計算されるボーナスや地域手当も掛け算で上がります。
私の場合、昇給した分の税金を引かれても、手取りとしては5万円程度増えましたね。あと、ボーナスの金額も15万円ぐらい上がりましたね。
年収としては、あくまで目安ですが、30歳前後の主任で、500万円程度になります。
昇任すると、その後の定期昇給のペースもあがります。
昇任時だけでなく、昇任後の毎年の定期昇給でも昇任のメリットが実感できるでしょう。
QA|地方公務員の主任職に関する疑問
主任職として充実した公務員ライフを!
主任職は、責任は重くなりますが、その分だけやりがいも大きい役職です。
目まぐるしく変わる社会情勢により、行政事務はさらに複雑化しています。
主任職に求められる能力や役割も変化していくでしょう。
しかし、住民のために働くという公務員の基本的な使命は変わりません。
常に学び続け、成長し続ける姿勢を持つことが、主任たる姿だと思います。
主任を目指す方々、そして現在主任職にある方々には、この記事が少しでも参考になれば幸いです。