こんにちは、てつです。
私は就職氷河期時代にフリーターから公務員試験に合格。13年間都内某区役所で勤務し、最速で管理職選考に合格しました。
このブログでは、元公務員の私が、公務員時代の実体験をベースに、これから公務員試験に挑戦しようとする方・現役の公務員の方に向けて役立つ情報を発信しています。
今回の記事のテーマは、「公務員の仕事は退屈でつまらないって本当?」
住民として役所に行き、公務員の働く姿を見て、つまらなそう…退屈そう…に見えた経験は誰もがあるはず。
楽しそうに見えても変ですけどね…
確かに、公務員の仕事には、いわゆる「つまらない仕事」というのが多いのは事実です。
ただ、民間だって「つまらない仕事」はありますし、世の中が回っているのは「つまらない仕事」があってこそとも言えます。
でも、これから公務員を目指そうとしている人は、公務員の仕事がつまらない仕事ばかりだと、公務員になることを躊躇してしまいますよね。
実際はどうなのか…
「仕事がつまらない」は個人の主観ですが、公務員として13年勤務して課長補佐まで昇進した私が、公務員の仕事の実態を語ります。
この記事を読んだ方には、希望を持って公務員を目指していただきたいと思います。
【「公務員の仕事は退屈でつまらない」という決めつけは危険!】
そもそも「仕事がつまらない」のは当たり前
公務員の話をする前に、そもそも論として…
「仕事がつまらない」のはごく当たり前のことです。
これは、公務員に限らず、多くの社会人が感じていること。
内閣府の世論調査でも、国民が仕事にさほど充実感を感じていないことが分かっています。
この調査によると、「仕事にうちこんでいるとき」に充実感を感じる人はわずか27%あまり…
複数回答が可能な調査にもかかわらず、仕事への充実度はこの程度です。
これが必ずしも「仕事がつまらない」ことを直接示すものではありませんが、多くの人々が仕事に充実感を見出せていない現状を表しているといえるでしょう。
民間に就職しても、「つまらない仕事」にあたる可能性は十分にあるので、「公務員の仕事はつまらない」という決めつけは、逆に就職の幅を狭めてしまうので、注意が必要です。。
ただ、そのなかでも、世間一般では「公務員の仕事は退屈、つまらない」というイメージがありますよね。
なぜ「公務員の仕事はつまらない」と言われるのか…その理由を紐解いていきたいと思います。
公務員の仕事が「つまらない」と言われる理由とは?
公務員の仕事は一般的に「つまらない」「退屈」というイメージを持たれがちです。
なぜそのように言われるのでしょうか?
考えられる主な理由は以下の7つです。
- デスクワークが多い
- 単調な仕事が多い
- マニュアル通りの仕事が多い
- 事前の根回しが大変
- 自分の意見が潰される
- 達成感を感じづらい
- 喜ばれることが少ない
ここでは、公務員の仕事が「つまらない」と言われる7つの理由について、私自身の経験も交えながら、それぞれについて詳しく解説していきます。
デスクワークが多い
黙々とデスクに向かって仕事をしている姿は「つまらない」という印象を与えます。
公務員といえば、デスクに向かって仕事をしている姿がまず頭に浮かぶでしょう。
実際に、公務員の仕事の大半がデスクワークなのは確かです。
書類作成、データ入力、文書管理など、パソコンに向かっての作業が中心。
これは、行政の透明性と説明責任を確保するために、あらゆる業務を文書化する必要があるからです。
また、住民からの問合せや相談に対して、正確かつ迅速に対応するためにも、デスクワークは欠かせないのです。
単調な仕事が多い
公務員の仕事に単調な仕事が多いのも「つまらない」と言われる要因です。
単調な仕事としては、住民からの申請書のチェックとデータ入力作業が典型的な例ですね。
本来なら申請手続きもすべてオンライン化できればこうした単調な作業は減ります。
ただ、行政サービスはすべての住民に対して公平なサービスが求められるので、オンライン手続きができない高齢者に配慮する意味でも、紙媒体での手続きが相当あります。
また、日々の業務はもちろん緊急的な業務も突発的にありますね。
例えば、臨時給付金の給付事務の場合、
開封作業➡申請書記載内容と添付書類のチェック➡入力作業➡申請書類の仕分け
といった単純作業が必要ですが、自治体によっては全庁的に職員を参集させて特別な体制を整え、人海戦術でこなしていかなくてはいけないんです。
このほか、コロナの感染者数の把握や問合せ対応も膨大な作業が発生しました。
私は、いずれも応援職員として従事しましたが、終わりの見えない単調な作業の連続で、正直滅入ってしまいそうでしたね。
マニュアル通りの仕事が多い
公務員の仕事には、詳細なマニュアルやガイドラインに沿って進める業務が多くあります。
これは、行政サービスの一貫性と公平性を保つために必要だからです。
例えば、住民票の発行や各種申請の処理など、日常的な業務にはほぼ例外なくマニュアルが存在します。
これにより、担当者が誰であっても同じ水準の行政サービスを提供することができるのです。
また、法律や条例に基づいて業務を行う必要があるため、その解釈や適用方法をマニュアル化することで、誤った判断や対応を防ぐ役割もあります。
ただ、このマニュアル主義が「つまらない」と感じられる要因にもなっているのは事実です。
マニュアル通りの仕事は、個人の創意工夫や裁量の余地が限られてしまいますからね。
事前の根回しが大変
事務処理方法の変更や新規事業を実施する場合などは、事前に関連部署に説明する必要があります。
事前の説明をしておかないと、あとで想定外の問題が起こる可能性があるからです。
あとは、単純に「ウチは聞いていなかった」などと、他部署の反感を買うというのもあります。
これを防ぐために、事前にいわゆる「根回し」というものが行われるわけですが、これが結構大変です。
同じ説明を係長➡課長➡部長にするうえ、関連部署を回って何度も何度も…
場合によってはアポ取りも必要で、かなり骨が折れる作業です。
問題点が発見されたら、修正して、根回しのやり直し…
必要な作業とはいえ、「つまらない」というのも分からなくはないですね。
自分の意見が潰される
役所には独特の階層構造があるため、意思決定のプロセスにもいくつものハードルが存在します。
このため、若手や中堅職員が新しいアイデアや改善案を提案しても、なかなか採用されず、「潰された」と思う職員もいます。
例えば、業務効率化のための新しいシステム導入を提案しても、「前例がない」「予算がない」「リスクが高い」などの理由で却下されることも…
上司に「他の自治体で同じような実例はあるの?」と聞かれるのもあるあるですね。
とにかく、役所は良くも悪くも「慎重」で、特に新しい案を通すには相当高いハードルがあります。
そういう環境にいると、「自分の意見はどうせ通らない」という諦めに似た感情が生まれて「つまらない」と思ってしまうかもしれません。
ただ、最近はどの自治体も魅力発信のために、他の自治体にないアイデアが必要とされている傾向があるので、昔ほどの慎重さはない気はします。
達成感を感じづらい
公務員の仕事は成果が目に見える形で現れにくいという特徴があります。
これが「達成感を感じづらい」主な要因で、「つまらない」という感情につながりかねないのです。
例えば、日常的な窓口業務や書類処理は、円滑に進めば当たり前と思われがちで、特別な評価を受けることはほとんどありません。
また、長期的な政策立案や大規模プロジェクトは、完成までに何年もかかることがあり、自分の仕事の成果が確認できないというのもあります。
喜ばれることが少ない
公務員の仕事の多くは、日常生活に不可欠なものとして「当たり前」と思われているため、特別に喜ばれることが少ないのが現実です。
例えば、道路の維持管理、ゴミ収集、住民票の発行など、多くの行政サービスは問題なく行われていれば、市民に意識されることすらありません。
むしろ、何か問題が発生したときにのみ注目されることが多いのがつらいところです。
喜ばれたり、感謝されるというのは、仕事のモチベーションに大きく関わってくる要素なので、それが少ないと「つまらない」と感じてしまうでしょう。
ただ、これは部署や担当業務によっても違うので、一概には言えません。
私の場合は、住民票発行では確かにあまり感謝されたことはありませんでしたね。
でも、福祉事務所で生活保護ケースワーカーをしていたころは、感謝されることが本当に多くて、とてもやりがいを感じていました。
ざっくりと言ってしまえば、お金を給付するなど、「住民の生活を直接支えるような業務」は感謝される機会が多いですね。
公務員にとって「つまらない」仕事が大事。その理由は…
ここまで、公務員の仕事が「つまらない」と感じられる理由を見てきました。
確かに、公務員の仕事は一見すると魅力に欠ける面もあります。
しかし、実はこれらの「つまらない」と感じられる仕事こそが、行政サービスの根幹を支える重要な役割を果たしてまいます。
なぜ、一見つまらなく見える仕事が大切なのでしょうか?
公務員の仕事の本質を解説します。
営利目的ではないから
役所が行う事業は営利目的ではありません。
公務員は、「社会的な必要性が高く、かつ民間企業がやっても儲からない仕事」をやっています。
なので、必然的に「効率が低い仕事」が多くなり、「つまらない」につながるというわけです。
さらに、多くの住民を抱える自治体では、同じ作業を大量に処理する事務が発生します。
ただ、これらの業務はほとんどが社会に必要不可欠なもの。
給付金の一斉支給処理がその最たるものですね。
一見「つまらない」ように思える、単調で大量の事務作業こそ、住民のためになる仕事が多いのです。
組織が大きすぎるから
役所は巨大な組織です。
私はいつも役所は「小さな会社の集まり」と表現していますが、全く異なる業種の仕事をする部署が存在し、互いに影響し合っています。
そして、そこで働く職員は大規模な自治体だと数千人にのぼります。
役所はマニュアル通りの仕事が多いと言いますが、これだけ大規模で大量の職員を抱える組織では、マニュアルがないと統制がとれなくなりますよね。
また、大きな組織だからこそ意思決定のプロセスが複雑で、さまざまな部署や上司の承認が必要となり、実現までに手間と時間がかかります。
これが役所の不効率性を生み出すのですが、民間企業ができない業務を一挙に担っているのですから仕方がない部分があります。
ただ、組織が巨大なため、担当1人が取り扱う予算も巨額で、より大きなプロジェクトができるという一面もあるため、やりがいを見出そうとすればいくらでもあるのは確かです。
長期間にわたる事業があるから
役所が行う事業のなかには、長期間にわたる事業も多いのが特徴です。
例えば、図書館や学校などの施設の建設には数年かかるため、計画策定から完成までの間に担当が変わるのは珍しくありません。
さらに、まちづくりの分野は特に長く、再開発などが絡むと、30年とか50年単位の事業になります。
こうなると、事業が完了する頃には、計画段階に携わった職員はすでに退職しているということも普通です。
事業が大きくなればなるほど、業務が細分化され、1人の職員が担う業務が狭まり、達成感を得づらくなるというのはあります。
また、細部まで文書として残しておかなければ、事業の引き継ぎが途絶えてしまう恐れもあります。
このように、公務員が行う仕事はほとんどが必要だからあるものです。
ただ、民間企業にはない、非常に手間も時間もかかる独特な業務ということもあり、これが「つまらない」というイメージを抱かせる要因になっていると考えられます。
【経験談】「公務員がつまらない仕事をするのもいい」と思ったわけ
私は13年間、都内の区役所で勤務し、数多くの「つまらない仕事」をやってきました。
ただ、はじめは「つまらない」「退屈」と思っても、続けていると案外そう思えなくなった経験も多々あります。
すると、
つまらない仕事をするのもいいな…
と思えてきたのです。
そんな私の経験を語ろうと思います。
クリエイティブな仕事ばかりだと疲れる
私は教育委員会の事業系の部署で勤務したことがあります。
事業系の仕事は、単純業務が少なく、新しいアイデアが必要な仕事でやりがいをとても感じることができますが、
クリエイティブな仕事ばかりだとさすがに疲れる
というのが本音です。
アイデアが出てくるときはいいのですが、行き詰まることもしばしばあり、悩むこともありました。
そういうときに、臨時給付金やコロナの応援業務に従事して、
ただひたすら単純業務に没頭するのもありだな
と思いましたね。
業務自体は単純でも住民に最も必要とされる業務なので、やりがいを感じましたし、気分転換になったというのもあります。
どんな仕事もバランスが大事なんだなと実感した経験です。
基本の「き」を身につけられる
公務員がよく行う作業で、通知類の封入・発送業務がありますが、これは公務員の「つまらない仕事」の代表格ですね。
私もほとんどの部署でこの作業はやってきましたが、
役所の仕事の基本の「き」が身についた
と思っています。
通知類の封入・発送作業は、役所内のほとんどの部署が行っているため、単純作業を繰り返して身体に教え込ませれば、どこの部署に行っても使えるスキルだからです。
逆に、ベテランになってこれを知らないと恥ずかしいことになりますよ。
やることは単純…
封筒のあて名と封入物が一致しているかを確認するだけ
通知等の文書を住民に発送する作業で、大量の郵便物を作成しますが、個人情報が含まれる場合も多いため、2人以上でチェックします。
でも、これをやらずに万が一、違う住民に届いてしまったら、個人情報の漏洩になってしまいます。
個人情報の漏洩は、悪用されるケースもあり、「ごめんなさい」では済まない事態です。
公務員が行う「つまらない仕事」には基本が身につく仕事が多く、公務員として長く働くことを考えると決して無駄な作業ではないと思います。
木を見ることで、森が見える
住民窓口の業務も私が経験した業務のなかでは、単純なものが多い印象でした。
住民票の発行業務もその1つです。
住民票発行業務を流れ作業でしていると、住民票の用途や効力に気が向きませんが、実はかなり奥が深いんだなと思いましたね。
住民票の氏名は、戸籍の氏名と一致させるのが原則ですが、難しい漢字が使用されている場合、時折、戸籍と住民票の記載が一致していないケースがあります。
この場合、住民票の氏名の記載を戸籍に合わせる修正が必要です。
なぜなら、特に相続手続きでは、親族関係を証明する書類として戸籍、住所を証明する書類として住民票が必要とされるため、一致していないと同一人物とみなされないからです。
住民票1枚が、住民だけでなく相続人全員にまで影響してしまうかもしれないのです。
一見単純でつまらない作業に思える仕事でも、その意義をかみしめながら仕事をすると、森のように大きなものが見えてくるというのはあります。
公務員志望者の方へ|公務員には「つまらない」「退屈」な仕事もあるけど、すべて意味がある!
これまで見てきたように、公務員の仕事には確かに「つまらない」「退屈」と感じられる側面があります。
単調な作業、細かい規則、長期にわたるプロジェクトなど、一見魅力に欠ける業務も少なくありません。
ただ、これらの仕事のすべてに意味があります。
公務員の仕事は、社会の基盤を支え、市民の生活を守るという重要な使命を担っています。
一見つまらなく見える作業も、実は公平で安定した行政サービスを提供するために欠かせないものなのです。
また、これらの仕事を通じて、公務員として必要な基本的なスキルや知識を身につけることもできます。
大事なのは、
1つひとつの仕事に自分なりの意義を見出すこと
これができれば、公務員でも民間でも、あなたは自分の仕事に誇りとやりがいをもつことができるでしょう。